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【書評】日本のテクノロジーで古代世界を発展させる『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する』

こんにちは、カムです。

近年、書籍化やアニメ化など、ネット小説の枠を超えてさまざまなメディア展開を見せている異世界小説。
バトル物やグルメ、ラブコメなど、多彩なジャンルがあり、同じ「異世界物」というくくりでも、作品によって大きく違ったテイストになることもしばしば。

中でも私が好きな異世界小説が『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する』(以下『宝くじ~』)です。

2010年から執筆が開始され、すでに小説家になろうで200話以上の話が投稿されており、書籍化、コミカライズもされています。

私がこの作品を知ったのはコミック版を読んだのがきっかけで、BOOK☆WALKERで無料期間になっていた1巻を読んだところ、「すごく面白い!」と思い、さっそく原作である小説家になろうの作品ページに。
小説のほうもとても面白く、気がつけば最新話にたどりつくまで夢中で読んでいました。

これだけ熱中して読んだ小説は久しぶりなので、ブログで本作の魅力を取り上げたいと思ったため、筆を取ることにしました。

※重大なネタバレはとくにありませんが、作品の内容には触れているため、気になる人は当記事を読むのをお控えください。

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あらすじ

        (画像は双葉社HPより)

『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する』の物語は、主人公である志野一良がロト6で40億円を当選させたところから始まります。

当選したのは幸運でしたが、一良が億万長者になったことをどこかから聞きつけた昔の友達や宗教・ボランティア関係者がお金の無心に電話をかけてきたり、自宅のアパートまでやってくるようになります。
一良はそれらの亡者に嫌気がさし、父親に相談。そしてその父親の勧めで、群馬の山奥にある先祖代々からの屋敷に身を隠すことに。

その屋敷は長年放置されていたわりには状態がよく、綺麗で周囲には雑草も生えていないほど。一良が一人で屋敷の中を見て回っていると、南京錠がかかった観音扉が見つかります。南京錠に触れたとたん、「バキッ」という音とともに壊れてしまい、さらに不思議なことに床を見ても落ちたはずのその南京錠が見当たりません。

不気味さをおぼえながらも一良は扉を開き、畳張りの6畳間に足を踏み入れます。ところが足を踏み入れた瞬間、畳張りの6畳間だったはずの部屋が、こつぜんと石畳の通路に変わってしまいます。

普通ではありえない現象に戸惑う一良は、なおも石畳の通路を奥に進み、外の雑木林に出ます。雑木林を抜けると、そこには畑や木の家が建った村があり、欧米人風の見た目をした異世界の住民が暮らしている様子を目の当たりにします。

ここまでが本作の主人公が異世界入りするまでの流れです。

異世界入り後の大まかな流れ

異世界入り後は、一良が現代日本出身の人間というアドバンテージを活かし、その知識や技術、道具を使って困っている異世界の住人を助けていくという話になります。

異世界の住人を次々と助けていく一良は、やがてもともとその地で信仰されていた慈悲と豊穣の神様ではないかと周囲から思われるようになります。『宝くじ~』の異世界における文明レベルはとても低く(水車が発明されておらず、鉄が未発見であるなど)、先進的な日本の物品を持ち込んでくる主人公が神様のように見えたとしても、なにもおかしくないわけですね。

やがて一良の存在は、最初に一良が滞在していた村の外にも知られるようになり、その村を統治する領主の耳にも入ります。領主は折しも食糧事情や治水事情といった領内問題、さらには他国との一触即発で戦争が起きかねない緊張状態という複数の問題を抱えており、一良にそれらの問題を解決するための助言を乞おうとします。

一良としては最初の村でのんびりスローライフを送ることができればそれでいいと考えているため、あまり村の外のこととは深くかかわる気にはなれませんでしたが、他国との緊張の高まり、領主やその周辺の人々との交流をきっかけに、やがて領内やその領を治める国の問題を他人事とは思えなくなっていき……というのが大まかな流れです。

物語の特徴

『宝くじ~』の物語の特徴を4つ挙げてみます。

1.主人公は純粋な性格
2.プラトニックなラブコメ
3.魔法やファンタジー要素がほぼない
4.個性豊かなキャラクターたちの人間模様

1.主人公は純粋な性格

本作の主人公一良は嫌味のない、とても純粋な性格をしています。
社交的で常に周囲に気を配り、自分の利益をかえりみず、滞在している村や領のために精一杯努力する人間です。

恋愛慣れしておらず、綺麗な女性からちょっと見つめられたり、誘惑めいた言葉をかけられるだけですぐに顔を赤くしてしまう純情な一面もあります。

素直で澄み切った心の持ち主なので、見ていて清々しく、いつまでも応援していたくなるような愛おしさがある主人公です。

2.プラトニックなラブコメ

本作では、複数のヒロインが登場し、主人公に好意を持ちます。
しかし前述のとおり、一良は奥手な性格なので、自分からヒロインを口説くようなことはしません。

ヒロインも過度にアプローチすることはなく、表面上は友達のような関係が続きます。しかし、言動を見れば、いかに一良のことを想っているのかがひしひしと伝わってきて、なんともいじらしい。

本作は三人称で書かれた小説で、主人公だけでなく別の人物の視点で話が進むこともあります。その際にはヒロインの心理描写もあるわけですが、ヒロインの1人の一良への想いの強さには、思わず驚嘆させられるほどです。

性的な描写はほとんどなく、子供から大人まで安心して読むことのできる、プラトニックでゆるいハーレム要素もある上質なラブコメといえます。

3.魔法やファンタジー要素がほぼない

異世界小説では、魔法などのファンタジー要素が出てくることが多いですが、『宝くじ~』ではそういった要素がほぼありません。

ただし、ゼロというわけではなく、精霊のような存在は出てきます。それも時々ですし、現実世界に大きく干渉してくるわけではないため、いわゆる「なんでも非科学的な力で解決してしまう」状態にはなりません。

主人公は自らの知識と宝くじを当てて手に入れた潤沢な資金を使い、異世界と日本を行き来して、異世界で滞在する村をとりまく問題に立ち向かいます。立ち向かうといっても、日本の良質な物品をいくらでも買い込める経済力があるため、異世界もの特有の「俺つえー」感はしっかり味わうことができます。また、それでいて物語の細部にはしっかりとリアリティがあり、本当に古代の世界に日本人が行ったのでは!?というワクワク感も得られます。

私が痺れたのは、あることをきっかけに一良が滞在する村の作物や村人たちの身体に変化が訪れたとき、なぜその変化が起きたか、論理的な解釈を一良が試みようとしたシーンですね。異世界小説では、(あえて説明を省いている場合を除いて)「異世界だから」、「ファンタジーだから」で説明を終わりにしてしまうケースも少なくないと思うのですが、『宝くじ~』にはそういった横着がないんです。ちゃんと起こった現象に法則性を見つけようとする。そういう物語のほうが私は好きです。

4.個性豊かなキャラクターたちの人間模様

本作で魅力的なキャラクターは主人公やヒロインだけではありません。脇役の登場人物も大きな存在感を放っています。ここではそんな魅力的な登場人物を、ヒロインも含め以下に何人か紹介していきます。

村娘バレッタ

本作のメインヒロイン。一良が異世界入りして最初に入った村の長の娘。父親や村人を助けてくれた一良に深い感謝をおぼえ、以来なるべく行動をともにし、一良の力になろうとする。頭がよく、日本語や一良が日本から持ってきた本の内容をすぐ覚えてしまう。料理や裁縫など、家庭的な一面も。(もちろん)美少女。

また普段から一良のことしか頭になく、そのことで周囲に引かれてしまうことも。ただし、一良と同じで恋愛には消極的。

領主の娘リーゼ

一良のいる村を統治する領主の娘。平民にやさしく、若くして領民から絶大な支持を得ている。日々、面会(という名のお見合い)をこなし、さまざまな貴族から求婚されるが、よほどのお金持ちでないと嫌なため、応じることはない。(40億当てたために)気前のいい一良を、お金目的で誘惑しようとする。お酒好きで、めったに酔わない。

ヒロインの中で一番積極的ではあるものの、一良が奥手なのと、バレッタへの遠慮から、なかなか一良と一線を越えられずにいる。(もちろん)美少女。

領主の妻ジルコニア

領主の妻で、陸軍の軍団長も務める。リーゼの継母であり、ヒロインの中で一番一良と年が近い。戦争で身近な人を奪われた経験から、自分や周囲の人に危害を加えようとする者をひどく憎み、強硬手段もいとわない過激な一面も。甘いもの好きで、一良が持ってくるチョコやアイスが大好き。

領主とは政略結婚ではあるものの、一良に気があるような素振りを露骨に見せるため、一良はもっと人妻としての自覚を持ってほしいと思っている。ちなみにプロポーションが良い。

領主ナルソン

一良が異世界に行って入った村を統治する領主。領民思いで、責任感の強い働き者。チェス(一良が教えた)やお酒好きという一面も。

作中では、実の娘と妻の両方が主人公に好意を持つという展開に。本人は気にしてなさそうだけど、普通は地獄なんじゃ……ナルソン、それでいいの!?

最初は一良を利用する気なんじゃないか疑われてたりもしたけど、なんだかんだこの人が一番みんなのことを考えて行動している気がする。

軍人アイザック

ジルコニアの部下で、正義感の強い軍人。礼儀正しく、平民にも丁寧に接する。また信心深く、神として下々の者たちを救うべく顕現した(と思っている)一良のことを誰よりも敬い、その慈悲深さに無上の喜びを感じている。リーゼに思いを寄せているものの、リーゼが一良を想っていることは知っているため、バレッタが一良と成就することを切に願っている。

ちなみに私は作中の登場人物ではこのアイザックが一番好きです。ひと悶着こそありますが、あまりに人間味があって神様っぽくない主人公に畏敬の念を抱く様子がなんとも可愛らしい。

私が感じた『宝くじ~』の魅力

私が『宝くじ~』を魅力的だと思う理由は以下の4つ。

1.巨額のお金を使って日本で高い買い物をする様子が爽快!
2.主人公が人間であることを隠し通せるかのドキドキ感
3.どこまで異世界の住人を助けるかという迷い・葛藤、それに交錯するヒロインの想い
4.単純に異世界のキャラが日本の道具や食べ物に驚くのが楽しい

1.巨額のお金を使って日本で高い買い物をする様子が爽快!

宝くじで億万長者になったら何がしたいかといえば、まずはやっぱり好きなものを好きなだけ買いたいですよね。

本作の主人公は40億円の資産があるので、買えないものはそうそうありません。高級料理でもアクセサリーでも、なんでも買いたい放題です。

しかし、本作ではそんな私欲を満たすためだけのちゃちな買い物をして終わるわけではありません。水車や大量の肥料・食料など、それぞれ何百キロにも及ぶ買い物をし、飢饉にあえぐ村にリアカーで運び込んでいきます。さらには物資運搬の効率化を図るために農業用運搬車、ミニショベルカーまで購入し、トン単位で堆肥を持ち込んだりもします。これだけスケールの大きい買い物は見ているだけで気持ちがいいものです。

やっていることは完全に開拓業者ですが、それでも高くて何千万円という価格にしかならないため、40億円という大金の前では大した出費にはなりません。今後も主人公は一体どういった大口の買い物・取引をしていくのかが楽しみです。

2.主人公が人間であることを隠し通せるかのドキドキ感

前述のとおり、本作の主人公は文明レベルの低い地域に先進的な技術や道具をもたらすため、異世界の人々から神様だと思われます。

主人公はそのことに最初戸惑いをおぼえますが、そう思われていたほうがなにかと都合がいい(日本から来たことの説明を省略できることや身の安全などの理由から)ということになり、むしろ自分のほうから「神」を名乗るようになります。

しかし、もちろん主人公の一良は神様ではなく、ただの人です。けがもすれば、病気にもなります。また、主人公自身、人当たりがよく威厳のあるようなタイプではないため、一見して神様のイメージとはかけ離れています。

すると当然、「本当に神様か?」という疑いを抱く人物も出てきます。作中では基本的に本当に信じられる人間にしか正体を明かさない主人公ですが、普段の一良のふるまいから意図せずバレてしまうこともあります。そういったバレるの?バレないの?というドキドキ感も本作の醍醐味です。

3.どこまで異世界の住人を助けるかという迷い・葛藤、それに付随するヒロインの想い

はじめ主人公は飢饉が襲っていた村のことを無制限で支援していましたが、やがてどこまで異世界の住人を助けるべきなのか、迷うようになります。それは倫理的な理由というよりも、自分の安全を確保したり、気分を害する結果にならないようにするためです。

詳しく説明すると、異世界への支援をおおっぴらに続けていると、自分の存在が異世界中に知れ渡るようになります。すると中には、主人公が持ち込んだ知識や技術、道具を暴力で奪おうとする者も現れるかもしれません。また主人公が支援をしている領と敵対関係にある領からしてみれば、主人公は邪魔者でしかなく、やはり拉致や暗殺などのおそれが生じます。加えて、ある領を発展させれば、それ以外の領と相対的に国力に差を生じさせることになり、支援した領が望めば他の領へ侵略や略奪を行うことも可能です。そういった残酷な行いが、自分の支援を引き金にして起こるのは主人公にとって望ましいことではありません。

そのあたりの事情は各ヒロインにも無関係ではなく、主人公に危害が及ばないように、また主人公が悲しい思いをしないで済むように、時に主人公と相談しながら、時におのおのの裁量で立ち回ります。それに加え、主人公に振りむいてもらいたいという気持ちや、主人公を利用して自分の目的を成し遂げたいという気持ちもからむため、かなり複雑な人間模様が醸成されます。迷いや葛藤は主人公だけでなく、すべての登場人物が持っているということに本作では気づかされるのです。

4.単純に異世界のキャラが日本の道具や食べ物に驚くのが楽しい

異世界小説ではお決まりのパターンですが、異世界のキャラが日本の道具を見て「なんだこのすごい技術は!」とか、食べ物を食べて「なにこれうますぎる!」と驚く様子が楽しいという点は『宝くじ~』でも同じです。

しかも『宝くじ~』の場合、主人公の資金力が圧倒的なので、この楽しさを通常よりも得られやすい特徴があります。異世界小説における主人公の多くは平凡な人間であるために、転生して強力なスキルを得るとか、生前身につけた専門技術で差別化を図るとかするものですが、本作では「能力」ではなく「潤沢な資金から得られる豊富な物資」が主人公の強みになっているといえますね。

『宝くじ~』は主人公の平凡な人生へのサプライズである

『宝くじ~』は決して平和な異世界が舞台というわけではないのですが、全体的にほのぼのとした雰囲気のただようやさしい物語です。異世界にやってきた一良という人間は、異世界における特異点として周囲の人々から保護されますし、また一良もそういった人たちを精いっぱい護ろうとします。

現代日本人の知識や資金力があるからといってそんな簡単に古代を生き残れるのかという話もありますが、私は『宝くじ~』に関しては、そのあたりのリアリティが求められるタイプの話ではないと思っています。サラリーマン生活に幕を下ろし、異世界でスローライフを送ることを望む一良が残酷な目に遭ってしまえば、それはもう悲劇であり、話の方向性が完全に覆されてしまいます。

これは主人公が異世界との人々とのかかわりで癒されるのを通し、読者である私たちが癒されるための物語だと思います。一良は決して異世界でのんびりとした生活を送れるわけではありませんが、異世界で出会った人々を護るため、ひたむきに働くことに充実感を見出します。それは異世界生活をはじめてからの主人公の性格が、最初の頃と比べて穏やかになっていることからもわかります。

たとえば、以下の文章。

通された一室で寝込んでいるバレッタの父親を見た瞬間、一良は思った。
これは明日にも香典を持ってくる羽目になりそうだなと。

『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する:1』/すずの木くろ/モンスター文庫より

ヒロインの父親を見て、このブラックジョーク…笑

それから、

――食ったことねえし! 食えるわけねえだろ!
一良は器をバリンの顔面に投げつけてやりたい衝動に駆られたが、食事の席に招かれているというのに、そのような暴挙に出るわけにもいかない。

同書より引用

と、異世界では高級食材のを出されて、激高する一面も…笑

これらのシーンは異世界入りした日のことで、初めて見る異世界の様子に戸惑っていたために、激しくつっこむ形にはなっていますが、その事情を考えても、この頃の一良はちょっとだけ気性が荒いような気がするんですよね。

その後、異世界での日々が過ぎていくと、まるで聖人なのかと思えるようなやさしい性格に。最初ヒロインの村を助けたのは美少女であるヒロインのフラグを立てる打算もあったのに、一向に手を出さないし!笑

私はこの主人公の変化を、異世界生活で可愛い女の子と過ごしたり、村の発展に精を出したりしているうちに、日本での生活で蓄積した俗世の垢が落ちたからだと思っています。とくに一良の場合、お金目当てで寄ってくる人たちから逃れて異世界にやってきたわけですしね。

もちろん物語はまだ続いているので、これからどんな苦難が一良に待ち受けているのかわかりませんが、そういった障害も含めて一良には第二の生活を楽しんでほしいですね。そしてそれを私は見ていきたい。この作品はいつまでも続いてほしいと思うほど好きな小説です。

終わりに

『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する』は現在(2019年10月)も更新が続けられています。

すごく面白いので、異世界小説が好きな人も、そうでない人もぜひ読んでみてください(異世界小説の雰囲気が苦手な人でも読めると思います)。

小説家になろうのページはこちら また漫画版はこちら(ComicWalker)で最新話が期間限定で読めます。

(書籍版はWEB版に加筆修正されたものとなっています。2巻以降は番外編も。またイラストつきなので、キャラクターの見た目や風景がWEB版よりもはっきりわかります。ジルコニアさんのデザイン好き)

(こちらは私が最初に読んだコミック版)

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