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【2020年は子年】“ねずみ”が登場する本を7冊紹介【絵本・童話・文学】

(筆者カム)

雀子と声鳴きかはす鼠の巣 芭蕉

雀の子供が、近くに巣くった鼠たちと鳴き声を交わす情景を表現した句。雀は人家の軒や屋根に、鼠は天井裏などに住みつくため、当時の日本家屋ではこういった光景が珍しくなかったのだろう。また雀の鳴き声は「チュンチュン」、鼠の鳴き声は「チュー」と表される。似た鳴き声を呼応させ、人家で合唱を行う様子は想像してみるとなんともかわいらしく、また美しくもある。

令和2年となった2020年の干支は子年。鼠は人間にとって害獣だが、鼠は古来から人間に依存し、住居や食べ物のおこぼれにあずかってきた。その長い付き合いの中、いつしか人間は鼠を忌み嫌うだけでなく、時には「愛らしい小動物」として、ペットにしたり、キャラクター化するようになった。日本では数多くの民話に鼠が登場するし、『トムとジェリー』や『ミッキーマウス』は全世界で愛されている(また鼠は実験に使われることで、生物・医学の分野の研究に大きく役立っているという功績も忘れてはならない)。

そんな風に、鼠を登場させた物語は世界中に数多く存在する。この記事では、今年の干支である鼠にちなみ、“鼠が登場する本”を7冊紹介していきたいと思う。

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『ぐりとぐら』なかがわ りえこ/おおむら ゆりこ

鼠が登場する物語としては、言わずと知れた作品。ふたごの野ねずみ『ぐり』『ぐら』を主人公とした絵本で、この作品をこども時代に読んで「カステラが無性に食べたい!」と思った人は数えきれないほどいるだろう。卵やカステラの巨大さをきわだたせるために、小さな野ねずみを主人公に据えるという発想には敬服させられる。

初出は1963年。長い年月が経っても、国内はもちろん、世界各国で読まれ続けている偉大な絵本だ。おそらくその普遍性は、無駄を省いた絵とストーリーによるさっぱりとした作風から生まれているのだと思われる。

『ねずみの騎士デスペローの物語』ケイト・ディカミロ

アメリカ人作家による児童文学。2004年に、アメリカでその年の最も優れた児童文学作品に与えられるニューベリー賞を受賞している。耳が大きく、読書と音楽が好きなハツカネズミ・デスペローが、城のお姫様に恋をするという話。騎士(ネズミだけど)とお姫様という正当な児童文学でありながら、他にも光に憎しみと憧れを持つドブネズミや、お姫様になりたいと願う虐待を受けた女の子と、複数の主人公が登場する構成になっており、キャラクターの対比が鮮やか。読みやすい文章で、わかりやすい物語なので、子供にはもちろん、ふと王道児童文学が読みたくなった大人にもおすすめだ。

ちなみに本書はアニメ映画にもなっており、『ハリーポッター』シリーズで有名なエマ・ワトソンがお姫様の声役を務めている。

『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』斎藤惇夫

日本の児童文学作家・斎藤惇夫による作品。同作者の『グリックの冒険』に登場するドブネズミのガンバを主人公にした物語で、『グリックの冒険』、本作の『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』、『ガンバとカワウソの冒険』はシリーズ三部作として知られる。

『グリックの冒険』ではシマリスのグリックが主人公だったが、読者からのガンバ人気が高すぎて、2作目からガンバが主人公に成り代わっているのが面白いところだ(しかもこの三部作は『ガンバシリーズ』とすら呼ばれている…)。

本作は『ガンバの冒険』という名前でアニメ化もされており、2015年には3DCGアニメ映画も公開されている。最初に刊行されたのが1972年という事実を見ると、『ぐりとぐら』と同じく、日本で長く愛されている児童向け作品といえるだろう。

『ツェねずみ』宮沢賢治

数々の童話をのこした宮沢賢治が書いた生前未発表の作品。すぐに人のせいにするくせのある「ツェねずみ」が、他のネズミや動物、果てはバケツやちりとりなどの「道具」にまで嫌われるという話。誰にも相手にしてもらえなくなった「ツェねずみ」は、ネズミたちの最大の敵である“ねずみ捕り”と交友関係を持つが、またしても「ツェねずみ」の悪癖が出てしまい…というのが大まかな流れ。

ちなみに宮沢賢治はこの作品以外にも『クねずみ』や『鳥箱先生とフウねずみ』といったネズミが登場する寓話を複数のこしている。『鳥箱先生とフウねずみ』は「先生」を自称する“鳥箱”が主人公だが、『クねずみ』は『ツェねずみ』同様、仲間から嫌われたネズミを主人公に置いている。いずれの作品も、擬人化されたあらゆる動物・物が人間のような感情を持って行動するため、寓話らしく教訓に満ちて生き生きとした物語を楽しめるのが特徴だ。

宮沢賢治の作品の多くは青空文庫で読める。短時間で読めるものばかりなので、ちょっとした空き時間に読むのもおすすめだ→青空文庫 宮沢賢治 作品リスト

『クルミわりとネズミの王さま』E.T.A.ホフマン

音楽家、画家、法律家という顔も持つ多彩なドイツ人作家・E.T.A.ホフマンによる児童文学。怪奇・幻想小説を多く書いたことで知られるホフマンの物語であるだけに、幻想性が高く、楽しげな童話でありながらもどこか不気味さも漂っているという独特な作品だ。

あらすじは、7歳の少女マリーがクリスマスにくるみ割り人形をプレゼントされたことをきっかけに、人形の国と、ねずみの国の争いに巻き込まれていくというもの。くるみ割り人形は、ねずみの呪いのせいで醜い見た目をしており、その呪いを解くには、7つの首を持つねずみの王様を討ち倒さなくてはならないという。くるみ割り人形の正体が名付け親・ドロッセルマイヤーおじさんの甥であると考えたマリーは、哀れなくるみ割り人形を助けることを決意する。

初出は1816年。児童文学の古典であり、『白鳥の湖』『眠れる森の美女』と並ぶチャイコフスキーの三大バレエの一つ『くるみ割り人形』の原作にもなった作品だ。ちなみに前述の『トムとジェリー』シリーズには『トムとジェリーのくるみ割り人形』というチャイコフスキーのバレエを下敷きにしたOVAも存在する。

『ハツカネズミと人間』ジョン・スタインベック

1962年にノーベル文学賞を受賞したアメリカ文学界を代表する作家ジョン・スタインベックの中編小説。身体は小さいが頭のいいジョージと、子供程度の知能しか持たない大男レニーの出稼ぎ労働者2人が、新しい働き口の農場で働くという話。レニーは小動物が好きだが、力の加減ができず、その怪力でいつも小動物を撫で殺してしまう。ジョージはそんな危なっかしいレニーの世話をする。2人はいつか雇われの身を脱して、自分たちだけの農場を持ちたいと夢見ている。

舞台は1930年代、世界恐慌時のアメリカ。当時の貧しい労働者たちの現実を描くプロレタリア文学の側面を持っている。だが本作に難解さはなく、戯曲調の小気味良い会話劇や、アメリカ小説らしいシンプルな文体により、すらすら読み進められるのが特徴だ。

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『1973年のピンボール』村上春樹

当ブログでたびたび取り上げている、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の続編。「僕」の物語と、友人の「鼠」の物語が並行して描かれる中編小説。この「鼠」というのは動物の鼠ではなく、登場人物のニックネームなのだが、一応同じ“ねずみ”ということで、最後に紹介することにした次第だ。

あらすじは、翻訳をしながら双子の女の子と暮らしている「僕」の心を、以前夢中でプレイしていた「スペースシップ」というピンボール台を捉えたのをきっかけに、それを捜しにいくというもの。そのピンボール台は大学を辞めてから現実感のない日々を送っている「鼠」も気に入っていた。「僕」と「鼠」、二人の物語は交差することなくただ続いていくが、それぞれの章の底で「鼠」が「僕」の物語に影響を与えていることが、静かに感じられるつくりになっている。

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