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作家に「あなたの本、図書館・中古で読みました」と言うことの残酷さ

なんでもそうだが、本は新品で買うよりも古本屋で中古で買ったり、図書館で借りて読んだほうが安く済む。

しかも本は中古でも新品でも書いてある内容は変わらない。文字が読めないくらい劣化している本はそもそも売られないし、売られたとしてもレア本でないかぎり価格はぐっと落ちる。つまり、本は中古でも、「情報を得る」という主目的は基本新品と変わらない品質で果たされる。中古本が新品本と違うのは価格を除けば見た目くらいのもので、「本は綺麗で帯がついてなきゃダメ」という人でなければ、新品本よりも安く買える中古本を買おうと思うのは人間として当然の心理だと思う。

私自身もこの理由から、古本屋や図書館を利用することは多い。“汚れている”という生理的な気持ち悪さはあるが、我慢できないほどではないし、新品の本についている「帯」もないと困るというものではないため、新品じゃなくて古本でいいや、という気持ちになるわけだ。

しかし作家の中には、古本屋や図書館を誇張抜きで「憎悪」している人もいる。どれだけ古本が買われても、また図書館で本が借りられたとしても、その本を書いた作者には1円も入らないからだ。自分が苦労して書いた本を違法ではないとはいえ、“タダ読み”されたら気分はよくない。そしてその“タダ読み”が公然と行われる原因となっている古本屋や図書館を憎むのは、本の書き手からすればまた当然の心理といえる。

ただし、作家によっては古本屋や図書館に対して中立の立場を取ったり、むしろ肯定的な意見を述べたりすることもある。たとえば、“古本は直接作家の利益になることはないが、古本が買われる(借りられる)ことで買い手(借り手)がその本や作者のことを知るきっかけになる”というのが、それらの作家たちが古本屋や図書館を擁護する根拠としてあげられる。古本をきっかけにその本の魅力が広まることで、その作家の本を新品で買う人が現れ、結果的に作家にも利益が還元されるというわけだ。

また高度な研究・学術書など、一般読者の購入が最初から期待できない書籍の場合、図書館がその書籍を買うことで、一定の販売数が期待できるという側面もある。日本図書館協会のデータによれば、2018年の集計で、日本の図書館総数は3,296となっている。数百部~1,000部でも売れれば採算がとれるジャンルの書籍の場合、日本の図書館のうちの3分の1でも買ってくれれば、それだけで採算がとれてしまうため、図書館の存在は非常にありがたいはずだ。

しかし、大衆小説のような「一般読者からの購入」が作家の利益に大きな影響を及ぼす書籍を出している作家の場合、図書館からの購入や、古本の宣伝効果を、ありがたがらなかったとしてもおかしくはない。ベストセラー作家ならなおさらで、図書館や古本屋がなければ、もっと自分の書籍は売れて利益が大きくなっていたはず…と考える人も多いだろう。

ベストセラー作家ではなかったとしても、古本屋や図書館を嫌う心理自体はすべての作家において尊重されるべきものだと思う。なぜなら古本屋や図書館は作家の利益の底上げのために存在しているわけではないからだ。古本屋は自分の店の利益のために、図書館は地域の人々に知識や情報を提供するために存在している。その事業の中で作家が多少損をしたとしても、べつに気にしないのではないだろうか。

また、古本屋や図書館が作家の利益を減らしている可能性があるという事実は、作家が憤る理由の一部分でしかないと思う。問題は、第三者が作家の了解もなしに、作家の商品である「書籍」を勝手に不特定多数に回し読みさせているということであり、その構図を「古本の被害者」となりえる作家が面白くないと思うのは仕方のないことだ。

だからツイッターなどで作家に対し、「あなたの本、図書館・中古で読みました」と言うのはあまりにも残酷な行為だ。本当にこんなことを言う人がいるのかと、私は今でも信じられない気持ちだが、複数の作家がツイッター上でその被害を訴えているところを見ると、どうやらその手の「報告」をする人はそこまで珍しくないようだ。

古本を買うことは悪いことではない。図書館で本を借りるのも悪くない。しかし、作家に直接そうしたことを言うのは地雷を踏むようなもの。作家からすれば「あなたの本は新刊で買う価値ないですよ」と言われているようなものであり、見方によっては最悪の侮辱行為に取れるのだ。

もちろんアンチでもないかぎり、そういった「報告」をする人に悪気はないのだろう。ただなんとなく言ってみただけのことであり、発言の趣旨は、ファンである作家に「あなたの本を買った」ことを伝えたかっただけの話なのだから。

ツイッターが大流行している現在、宣伝のためにツイッターアカウントを持つクリエイターは多い。昔は手紙に書いてわざわざ郵送していたメッセージも、PCやスマホで簡単に送れるようになった。しかし、そのメッセージ1つで、クリエイターのモチベーションを意図せず大きく下げてしまうことがあることに、私たちはもっと自覚的になるべきなのかもしれない。

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